• (図1)日本のCO2排出部門

  • (図2)解決すべき社会問題

  • (図3)太陽光の導入に前向きになれない理由

  • (図4)太陽光を導入しない理由がなくなるサービス

  • (図5)ビジネスモデル

K-NIC Social Business School
地域や社会の課題に対して、自ら培ってきた知識、経験、ネットワーク等を活かし、ビジネスの手法を用い収益もあげながら解決を目指す、ソーシャルビジネスによる起業に関心がある方が近年増えています。そうした方を対象とした、川崎市ソーシャルビジネス連続講座「『K-NIC Social Business School(全6回)」を2022年10月から12月にかけて、Kawasaki-NEDO Innovation Centerにおいて開催しています。
このセミナーは、起業時にメリットが受けられる「特定創業支援」の認定を受けており、所定の要件を満たした方は法律に基づく支援を受けることができます。今回の受講生には、会社員をしながらも社会的な事業に関わるきっかけを模索されている方、個人事業主としてお仕事されている傍ら新規事業を立ち上げたいと検討されている方、持続可能な事業展開と組織運営の課題を抱えるNPOの方など、個性的で幅広い背景や思いをお持ちの方にお集まり頂いております。

第3回 10月31日 社会課題をビジネスで解決するには ~日本の自然エネルギー普及に挑むハチドリソーラーの挑戦の軌跡~

本イベントではソーシャルビジネスを如何にビジネスとして成立させ、成長させていくか。事例を用いながらお伝えしていきます。第3回目の今回は、ハチドリソーラー 代表取締役社長 池田 将太 氏に語って頂きました。
簡単に概要を纏めましたので、気軽にご一読いただければ幸いです。

講師プロフィール

ハチドリソーラー 代表取締役社長 池田 将太 氏
 
◯経歴
1998年 千葉県船橋市生まれ
    小学校〜高校まで野球に熱中
2017年 麗澤大学に入学
2019年 途上国の開発支援事業に従事(ミクロネシア連邦)
    小学校英語教育支援事業設立(千葉県柏市)
2020年 地域の小水力発電を行う社団法人を設立・理事就任
2021年 ボーダレス・ジャパンに社会起業家として入社
同年10月 ハチドリソーラー設立 代表取締役 就任 https://hachidori-denryoku.jp/solar/

多くの人が「仕組みの欠陥」「社会的な欠陥」によって生きづらさを感じている現状。様々な社会問題を目にしたもののすぐに動けない自分に悔しさを感じると共に「どんな問題に出会っても、その問題に直面する当事者と最強の仲間と一緒にソリューションを生み出せる、今はない”0”を”1”にできる会社を創る」と決心。

目次

1.解決する社会問題
 日本が抱えるエネルギー問題

2.ビジネスモデルとソーシャルインパクト

3.今後の展望 
 「世界一の0→1ソーシャルベンチャーへ」

1.解決する社会問題 日本が抱えるエネルギー問題

私が今解決しようと思っているのが「エネルギー自給率の低下」と「進まない再エネ普及」というこの2つです。火力発電に頼り切った日本のエネルギー問題というのが非常に大きく、これは地球温暖化とも関わってくるのですが、原因として起こっているのがエネルギー自給率がとにかく低いという実態と、これだけSDGsという言葉が行き渡る中で再エネの普及がほとんど進んでいないという現状であります。
(図1)日本のCO2排出部門

今、日本というのは80%が火力発電によって供給しているという状態です。再エネ比率という点で見ても日本は先進国の中で最低水準となっています。未来から多くを”前借り”し”資源不足”という借金を未来へ残そうという社会であるのです。そして今、地球温暖化が進んでいる現状を自然現象の一環ですよねと片付けられないような状況が起きているのです。地球温暖化の原因のメインが二酸化炭素であるとして、日本全体のCO2の排出部門を見てみると、火力発電を電気に転換する際に発生する、エネルギー転換部門でのCO2排出量の割合が40%近くある現状にあるんですよね。そしてなおかつ家庭部門で見てみると車のガソリンなどよりも電気を使うところの方が実はCO2の排出量が多いという実態があります。
(図2)解決すべき社会問題

インフラとして私たちに欠かせない電気というものが一番地球温暖化を悪化させていて、それがほとんど火力発電によって作られているという状態である、というところから僕らとして解決しなければいけないのは今20%しかないと言われている自然エネルギーを増やしていきながら、今の主電源の比率を逆転させていかなければいけないことだと考えています。そこで目をつけたのが住宅の屋根でした。なぜならば、全ての住宅が太陽光パネルをつけ、そこに加えて、企業の屋根も含めると発電量だけで見ればほぼ全ての消費電力を屋根だけで賄えると言われているからです。ただここで問題なのは住宅の太陽光パネルの普及というのは実は9%しか進んでおらず、91%の住宅が太陽光をつけていないという実態です。

そこで太陽光パネルを導入していないユーザーさん約50人ほどにヒアリングを行い、そこで出てきた理由として挙げられたのがこちらです。
(図3)太陽光の導入に前向きになれない理由

そこでどんなサービスがあればみなさんが太陽光パネルを導入してくれるだろうと模索し、辿り着いたのがこんなサービスがあったら良いなという発想でした。
(図4)太陽光を導入しない理由がなくなるサービス

2.ビジネスモデルとソーシャルインパクト

事業の立ち上げ資金は1000万円。1つの家に太陽光パネルを設置する費用は150万円ほどなので7棟ほど設置したら会社も潰れてしまう状況でした。そこで、自社資本を使わずにして(図4)の様なサービスを提供するためのビジネスモデルが以下になります。
(図5)ビジネスモデル

僕ら、ハチドリソーラーはDORYOKUという施工会社さんと、長州産業という国内で唯一パネルを作っているメーカーさんのそれぞれから工事、部材を仕入れます。本来であればこの費用を僕らがお支払いして個人さんにリースするという形をとるのですが、僕たちはそのお金がなかったのでいろんな金融機関に出向いて、唯一やりましょうと言ってくださった1社さんと組んで、僕らが仕入れたものをその金融機関さんに売却し、それをまた借り入れる形をとりました。そしてそれを個人さんに貸し出す形にすることによって、僕らは金融機関さんに売却するタイミングで利益が上がると。そうすることで持ち出しなく太陽光パネルを個人さんの自宅の屋根につけることができるということです。

そして最終的にできたサービスが、個人さんのご自宅に初期費用0円で太陽光パネルをつけることができるハチドリソーラーというものになります。現在、設置してくださっている方がどんどん増えていて、10世帯が太陽光パネルを設置すると大きい高圧発電所約1つ分になると言われているのですが今私たちは60世帯ほどに設置していますので約6つほどの高圧発電所を作れているという現状です。今後目指すところとしては、3年以内に5000件設置していき、地球温暖化のリミットを迎える分岐点となると言われている2030年には10万世帯に設置していきたいと思っています。まずはここをベンチマークしながら「太陽光発電といえばハチドリソーラーだよね」というようなところをまずは目指していきたいなと思っています。

3.今後の展望 「世界一の0→1ソーシャルベンチャーへ」

最後に今後の展望なのですが、自身の経験の中でなかなか取り組むべき問題を絞り切れないなと実感したところから、世界一の0→1に特化したソーシャルベンチャーを作っていきたいなと思っております。出会った問題をスルーせずに0→1のソリューションを作ってトライしていくという事業体を作っていきたいと思っています。僕らは欠陥となっている仕組みなどに対して新しいソリューションを生み出し続けることにこれからはトライしていきます。なので僕たちが目指すモデルとしては、ハチドリソーラーで得た利益を利用して新規事業開発していくというものです。半年に1本新規事業を立ち上げていこうと思っており、新しい新規事業で得た利益をまた新たな新規事業に回していき、社会に新しいソリューションを作り続けていくということに取り組んでいきたいなと思っています。

この記事に関する問合せ先

団体名
川崎市経済労働局イノベーション推進部
電話番号
044-200-0168
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