K-NIC Social Business School
地域や社会の課題に対して、自ら培ってきた知識、経験、ネットワーク等を活かし、ビジネスの手法を用い収益もあげながら解決を目指す、ソーシャルビジネスによる起業に関心がある方が近年増えています。そうした方を対象とした、川崎市ソーシャルビジネス連続講座「『K-NIC Social Business School(全6回)」を2021年11月から12月にかけて、Kawasaki-NEDO Innovation Centerにおいてオンライン開催しています。
このセミナーは、起業時にメリットが受けられる「特定創業支援」の認定を受けており、所定の要件を満たした方は法律に基づく支援を受けることができます。今回の受講生には、会社員をしながらも社会的な事業に関わるきっかけを模索されている方、個人事業主としてお仕事されている傍ら新規事業を立ち上げたいと検討されている方、持続可能な事業展開と組織運営の課題を抱えるNPOの方など、個性的で幅広い背景や思いをお持ちの方にお集まり頂いております。

第5回 12月8日 ソーシャルビジネスのコンセプト策定

こんな人におすすめ!
・ソーシャルビジネスによる起業や、事業化に関心のある方
・社会問題に関心が高い方、解決したい方
・新規事業立ち上げを志す方

講師紹介

ソーシャルフリーランス、一般社団法人インパクト・マネジメント・ラボ共同代表 土岐三輪 氏
ITコンサル企業を経て、環境系ベンチャーにて環境・省エネ・CSRコンサルティングに従事。2011年の東日本大震災を機にNPOへ移り、地域経済の復興支援に従事。2013年から3年間、バングラデシュの農村における女性の収入創出事業に携わる。2016年に帰国後、社会的インパクト投資、社会起業家・NPOの経営伴走支援。2019年よりフリーランスとして独立。

目次

・事業プラン~ソーシャルコンセプト編~
・課題の深堀
・事業プラン~ビジネスコンセプト編~

事業プラン~ソーシャルコンセプト編~

まずソーシャルコンセプトを立てるうえで、次の4つのことを考えなければなりません。
1.ミッション・ビジョン
2.困りごとを抱える対象・対象者
3.対象者の抱える課題
4.活動・価値提供

1のミッション・ビジョンに関しては、何を自分は叶えたいか、社会はどう変わってほしいか、使命を明確にします。
2では、本来この人たちはこういう状態にあってほしい、どう自分が価値を届けるかというところを明確にします。
3は、あるべき状態、理想像とどれだけの乖離が起きていて、実際にどのような問題を抱えているのかということを明確にします。
4は、3で明確になった乖離に対して自分がどう価値を提供していくか、どのような活動ができるのかを明確にします。ここが明確になればソーシャルコンセプトは決まります。

課題の深堀

ソーシャルコンセプトで明確になった課題を深堀するとき、1.調査・リサーチ→2.関係者インタビュー→3.システムの可視化→4.問題分析→5.目的分析の順に行っていきます。

「1.調査・リサーチ」では、まず文献・白書・他組織レポートなどから課題の状況を網羅的に把握します。国や自治体の施策、現状を把握することが大切です。また、マクロな視野でしか物事を調査しないというのはずれが生じる原因になる為、必ず対象地域にいる対象者に自らインタビューするということも大事になってきます。すると関係者の輪が広がり、どんどん情報を得られるようになり、課題の解像度が上がります。

「2.関係者インタビュー」では、1でのインタビューをする際のポイントのまとめです。現状把握を現地で行う際に、二つのやり方があり、一つ目は行動観察です。対象者がどのような生活を送っているか、習慣や無意識に行っているものの背景・理由・深層心理を突き詰めることで現状把握を行います。二つ目は、個別インタビューです。個々の対象者の悩み事、望むこと、本音を探ります。この際の留意点として、話しやすい雰囲気作りをする、分かりやすい言葉を選ぶ、こちらから心を開く、体験と感情を行き来して紐づけることを行い、現状把握します。

「3.システムの可視化」では、1、2で収集した情報を基にシステム図を作ります。対象者を取り巻く状況を可視化することで、利害関係やいままで見えなかった関係が明らかになります。よくドラマや映画でみる相関関係図のように書くと良いでしょう。

「4.問題分析」は、浮かび上がってきた問題を構造化し、因果関係や構成する要素を明らかにします。この際、因果関係と要素分解の考え方でピラミッド型に分解していくと考えやすいです。

「5.目的分析」では、4と同様にして、今度は目的を分析します。課題を解決する為に考えられる打ち手を洗い出し、活動を定めます。どのような手段によって、この課題を解決できるか、考えます。一番上に望ましい状態を置き、そのための手段を考えられるだけ洗い出します。さらにその1つ1つの手段に対する細かな手段を考え、4の問題に訴求できるかを比較します。

このようにして課題が明確になり、その課題に対する打ち手を定められれば、次は、ビジネスコンセプトの策定に入って行きます。

事業プラン~ビジネスコンセプト編~

 ビジネスコンセプトを考えるときに考えるべきものは4つあります。
1.ビジネスモデル 
2.ペルソナ・カスタマージャーニー 
3.4Pフレームワーク 
4.収益モデル

1.ビジネスモデル 

ビジネスモデルには4つのモデルがあります。対価型、寄付・助成金型、行政の受託型、労働型です。

「対価型」とは、組織と対象者がモノ・サービス、お金を相互に受け渡し合うモデルです。対象者の支払い能力が一定あり、ビジネスとしての自由度は高いが競合が生まれやすいのが特徴です。法人対法人(BtoB)型、医療保険や介護保険など一部支払いが軽減されているモデルなど派生したものもありますが、基本的にはこの対価型が主流です。

「寄付・助成金型」とは、法人や財団、行政、個人等が組織に直接お金を支払い、組織が対象者にサービスを提供するモデルです。クラウドファンディング、会員制度、プログラムに採択され助成金を受け取るモデルがこれに当たります。

「行政の受託型」は、自治体が組織に対しお金を支払い、組織が対象者に対してサービスを提供するモデルです。行政の公募へ応募し、採択によって事業を受けることができる制度です。事業があらかじめ行政により決められた成果を残したとき、その対価としてお金が支払われます。参入する際のリスクは少ないですが、事業内容が決められており、自由度が低いという特徴があります。

最後は「労働型」です。対象者を雇用し、労働を提供してもらうことで社会参画を促すモデルです。障害者の運営するカフェなどが最近増えていますが、このようなものや、フェアトレードがこれに当たります。

2.ペルソナ・カスタマージャーニー 

ペルソナとは、モノ・サービスを利用する典型的な対象者のイメージ像です。ペルソナを立てることで、どういう属性の人に価値を届けるか、どこに広告を打てばいいかという事が明確になり、効率化できます。名前、どこに住んでいるか、年齢、生い立ち、現在の仕事、スキル等、より鮮明にするとペルソナ像がはっきりとするでしょう。
また、カスタマージャーニーとは、対象者の行動を時系列に並べ、感情・思考・抱えるであろう課題を洗い出したものです。実際に購買するときの流れ、その時に思う感情、思考プロセスを洗い出すことで、サービス提供の課題が見つかる、タッチポイントが明確になるなどします。

3.4Pフレームワーク 

4Pとは、Product(製品)、Price(価格)、Place(販路、流通)、Promotion(販促、広告)の頭をとった、フレームワークです。PRODUCT:提供する物やサービスはどんなもか。PRICE:価格は幾らぐらいで、もしくはサブスクで月額このくらいか。PLACE:販路や流通、いつどこで提供するのか。PROMOTION:販促、どのように情報を届けるのか、その人に振り向いてくれる訴求するような形にしていくのか。こういったものを具体的に書き出していくことで、自分たちの提供する物やサービスが明らかになっていくでしょう。

4.収益モデル

初期費用、固定費、マネタイズ方法をざっくりと見積もり、必要な初期資金を確保しましょう。ただ、ビジネスモデルは事業を進めていくうえで変化していくという事は往々にしてあるので、ざっくりとイメージを持っておく程度で大丈夫です。
今回のセミナーにはソーシャルフリーランスの土岐さんにお越しいただき、事業を進めていくうえでのポイント解説をしていただきました。また、事業モデルを発表しあうグループワークもあり、アウトプットまで繋げられる非常に有意義な会になったのではないでしょうか。

以上、イベントレポートでした。この記事が皆様のお役に立つことができれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!

この記事に関する問合せ先

団体名
川崎市経済労働局イノベーション推進室
電話番号
044-200-0168
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