K-NIC Social Business School
地域や社会の課題に対して、自ら培ってきた知識、経験、ネットワーク等を活かし、ビジネスの手法を用い収益もあげながら解決を目指す、ソーシャルビジネスによる起業に関心がある方が近年増えています。そうした方を対象とした、川崎市ソーシャルビジネス連続講座「『K-NIC Social Business School(全6回)」を2021年11月から12月にかけて、Kawasaki-NEDO Innovation Centerにおいてオンライン開催しています。
このセミナーは、起業時にメリットが受けられる「特定創業支援」の認定を受けており、所定の要件を満たした方は法律に基づく支援を受けることができます。今回の受講生には、会社員をしながらも社会的な事業に関わるきっかけを模索されている方、個人事業主としてお仕事されている傍ら新規事業を立ち上げたいと検討されている方、持続可能な事業展開と組織運営の課題を抱えるNPOの方など、個性的で幅広い背景や思いをお持ちの方にお集まり頂いております。

第4回 12月6日 ソーシャルビジネスのための資本政策

昨今、社会格差をビジネスで解決するソーシャルビジネスが注目されています。しかしソーシャルビジネスで利益を出し、成り立たせるのは非常に難しいものとなっています。ソーシャルビジネスを如何にビジネスとして成立させ成長させていくかということを、事例を用いながらお伝えしていくK-NIC Social Business School 。K-NICでは12月6日 ソーシャルビジネスの資本政策ということで日本政策金融公庫の佐藤俊太様にお話を伺いました。

こんな方におすすめ!

・ソーシャルビジネスによる起業や、事業化に関心のある方
・社会問題に関心が高い方、解決したい方
・新規事業立ち上げを志す方

登壇者プロフィール

佐藤俊太/日本政策金融公庫
日本政策金融公庫国民事業センター南関東創業支援センター所属

目次

・日本政策金融公庫の概要
・ソーシャルビジネスへの支援
・ソーシャルビジネスの財源や資金調達
・事業計画の重要性
・参考

本セミナーの到達目標

1. 複数の資金調達方法を知る
2. 助成金や融資を得るための考え方を知る
3. 事業計画の重要性を理解する

日本政策金融公庫の概要

国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫の3つの組織で構成されています。

日本公庫の主な業務には小口な融資を専門に扱う国民生活事業、規模の大きい会社を扱う中小企業事業、農業、漁業、林業を主に扱う農林水産事業、そしてこれに加えて危機対応円滑業務というものを行っています。

基本理念として
①政策金融の的確な実施
②ガバナンスの重視
の二つを掲げています。

「①政策金融の的確な実施」というのは国の政策のもと、民間金融機関の補完を旨としつつ、社会のニーズに対応して種々の手法により政策金融を機動的に実施するということです。
また、公的な機関なので「②ガバナンスの重視」を掲げ、透明性の高い経営を行っています。

そして日本公庫(日本政策金融公庫)に求められる役割、皆さんが日本公庫を使おうと思ったときに一体何が使えるのかというところについては主に二つあります。
一つはセーフティネット需要への対応。もう一つは成長戦略分野への重点的な資金供給というところになります。

(図1)セーフティネット関連の融資実績

上記の図の左端の部分、平成20年のところにリーマンショックとあります。日本の景気が悪くなると日本公庫の出番です。
先行きが見通せなくなって、民間金融機関がお金を出しにくい状況になると、セーフティネットとして、日本公庫がお金を出します。

記憶に新しい新型コロナに関しては図の右端、令和2年度です。過去にないくらいの融資をお申込みいただいて、逆にその前がものすごく減っています。これはセーフティネット機能がある程度果たされ、利用に対して制限を加える、あるいは成長戦略の方に舵を切ったためです。
平成30年度から令和元年度に融資額は大幅に減りましたが、コロナ期間になり、セーフティネット関連でまた非常に多くの融資をしたという状況になっています。
このようにもし皆さんが事業をされる、またはこれからしようといている中で社会的な危機が起こった、経済ショックが起こったというときに日本公庫が使えるのだという認識をもって頂ければと思います。

ソーシャルビジネスへの支援

日本公庫がどんな支援をしているのかご説明します。創業を支援する組織は3種類あり、まず、支店が全国に152ヶ所あります。それから個別に相談を承ったり、セミナーを開いたりする創業支援センターが15ヶ所、遅い時間帯での相談も受け付けているビジネスサポートプラザというのが6ヶ所あります。
基本的に創業の前から支援をさせていただいております。お金を借りるときだけでなく、その前から相談を受けており、特に事業計画の策定支援というところに力を入れています。急な創業の場合、事業計画をつくりきれないという問題がある時、創業支援センターで支援させていただいております。創業後も金融機関や専門家などを紹介させていただいたり、セミナーをやったりフォローアップをしたりということもさせていただいております。

ソーシャルビジネスの財源や資金調達

ビジネスの手法で社会課題を解決するということは、とても重要です。寄付金や補助金だけを財源とする活動というのは財源が途絶えた瞬間に終わってしまうのですが、ビジネスという手法をとればその利益が続く限り永続的に課題を解決することができます。これがビジネスで解決する大きな強みであり意義であると思います。

平成26年にソーシャルビジネス経営の課題というタイトルでNPO法人の方を対象にしたアンケートを行いました。
ソーシャルビジネスを経営する際、どのようなことが課題であるかという問いに対し、人手の確保、従業員の能力向上が多くなっていますが、注目すべきは売り上げの増加であったり運転資金の確保、設備資金の確保であったりと資金の確保に関する悩みが多くを占めています。
ソーシャルビジネスの主な財源、各イメージが図2の表です。

(図2)ソーシャルビジネスの主な財源

やはり助成金や補助金が人気です。しかし自由度という点においては小さくなります。ソーシャルビジネスの成功というものはミッションの達成であり社会課題の解決を目指すものです。その中で資金使途の自由度の高さは重要なものになってきます。資金使途の自由度を高めようとすると営業収入があった方がいいですしクラウドファンディングなども有効です。このようにそれぞれの財源には特性があり、多くの財源を持っておくことが大事になってきます。

図2の表で融資というのが右端にあると思います。借り入れをしてお金を調達しようとしたときに誰から借り入れるのかといいますと、最も多いのが個人の借り入れです。社長であったり個人のエンジェルであったりですね。
その次に多いのは金融機関からの借り入れです。その中で第一に上がるのは政府系の金融機関。これはほとんど日本公庫のことだと思います。

次に多様な財源の確保というところでどういったモデルがあるのかというのをここで示しております。

(図3)多様な財源の確保

基本的には上記の表の左の方、営業収入を取りに行くというのが普通のビジネスに近いところです。対価収入積極獲得型というところですね。これがソーシャルビジネスのビジネスといわれている部分であります。右側の方になりますと非営利資源積極活用型(支援性)。例えば行政からの収入で助成金とか補助金、または図の下の方行きますとその他の収入としてクラウドファンディングなどがあります。この二つをうまく組み合せて事業を進めてください。これ以外の収入源として4番目、融資という考えがあります。

次に財源間の相乗効果というものです。

(図4)財源間の相乗効果

先ほど財源をたくさん持った方が良いという話をしたと思いますが、これが事業の中で密接にかみ合ってきます。助成金は有名な助成金や大きな助成金をもらえることができれば知名度が上がります。知名度が上がると事業的なことをやろうとしたときに一緒にやってみようとか買ってみようという所を集めることができます。寄付や会費も同様です。知名度の向上は寄付や会費を多く集めることに繋がります。そして寄付や会費などでお金を集めることができれば何かを提供する際によりいいものや、良いサービスを提供することができます。このように財源というのはお金を得るためだけでなく事業を成長させるツールという役割も持つのです。

助成金申請のコツ

ここからは皆さん資金使途の自由度は低いですがもらえる物はもらいたいなということで助成金の申請が上手な事業者というのはどんな事業者?ということで話をしていきたいと思います。
これは勘違いをしている方が多いかもしれないのですが、助成金申請の書き方が上手な人とは、申請書の書き方を知っている人ではなく、『考え方を知っている人』のことです。
では助成金申請の考え方を知っている人というのは一体どういうことでしょうか?これは助成する側の気持ちを考えてみるとよくわかります。

「情報の非対称性」という言葉があります。これは提供する側と受け取る側というのは知っている情報が違うということです。事業をする側であればお客さんや受益者がもっとこうすればいいのにというのが逆にお客さん側に立つと分からないというようなことが多々あります。ビジネスやソーシャルビジネスでも情報の非対称性というのは常にテーマになっていると言われています。

このような時は是非、逆の気持ちを考えてみてもらうと良いのです。
助成をする側はこの事業者にお金を出すとどのような成果が見込めるのかというのを内部で審査し、稟議なりを通してから助成金を出すという流れがあります。この助成する期間などの一定期間に成果を上げられると見込めないと助成金は出せないのです。融資も同様です。一定期間内に目標とする成果を上げられるかというのを求められているため、ここを念頭に置くと事業計画書の書き方が変わってくると思います。
例えば助成金をもらうことによって保護猫や保護犬を何匹増やせるとか、譲渡件数を何件あげられるとか、そのような成果として示さないと助成金はもらえないということになります。ここだけでも押さえていると申請書が書ける気がしませんか?

ここで助成金を申請する上で自分たちが一体何を行っているのかという話をどの様に書けばいいのかということについて話していきます。
ここであげられるテーマとして「分解・定義・設定」というものがあります。
社会問題を分解し、自分なりの定義、解釈をして申請事業によって解決できるレベルの課題として設定すると。少し難しいですが、まず社会問題というのを分解してみてください。たとえば環境問題といっても排気ガスの問題を掲げる人もいれば発電所の問題、またはエネルギーの問題など様々な観点があります。細かく分解をしていって自分なりの定義・解釈を加えますと。そしてその自分が設定した定義・解釈に関して何をするのかというのを課題として設定してくださいということです。
利益を上げるのがゴールではなく社会問題の解決がゴールであるソーシャルビジネスにおいて自分が解決したいと考える問題をとにかく分解し、自分に何ができるのかというところまで突き詰めていくのが最初のステップとなるのです。

事業計画の重要性

事業計画の位置付けとして「やりたいこと」「できること」「必要とされること」
の三つの項目があります。この三つが重なった部分がミッション実現に向けた事業計画と呼ばれるようなところになります。

(図5)事業計画の重要性~事業計画の事業運営への影響~

上記のグラフは事業計画の策定が事業運営に与えた影響ということのアンケート結果になっています。成果目標が明確になった、やビジョンが明確になった、自社の強みを整理できたということはもちろんなのですが、大事なのはその次にあるステークホルダーへの影響という事業に協力してくれる人が増えたという所や、周囲から共感を得られた、要するに協力してくれる人に対しても非常に好感を持つことができたということです。あくまで誰かに協力してもらおうとしたときに何かを示さないといけない。ぜひ計画にまとめるということをやっていただくといいのではと思います。


以上、イベントレポートでした。この記事が皆様のお役に立つことができれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!

この記事に関する問合せ先

団体名
川崎市経済労働局イノベーション推進室
電話番号
044-200-0168
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