一般社団法人ビブリオポルトス 小松 雄也 さん
自らの育った川崎を愛し、本を通じた人と人との交流による「読書のまち」を創り上げる。かつて岡本太郎が芸術を通じて自己を、社会を、生き方を表現したように、その「息子」を自称する熱き若者もまた、本の持つ無限の可能性を広めることを通じて、己の生き方を表現している―。

「読書も爆発だ!」
海外留学での気付き、本との出会い
-はじめに、本を好きになったきっかけはなんですか?

小さい頃から本が好きというわけではありませんでした。中学、高校と野球に没頭し、部活が中心の生活でしたから、本を読む時間というのもそんなになかったですね。本に没頭するようになったきっかけは、高校卒業後のカナダ留学です。英語を話せないながら、身振り手振りでもなんとかコミュニケーションはとれるものだなと思う一方で、知識不足から、向こうの友人たちに日本のこと、川崎のことを全然紹介できなかったのです。それがすごくもどかしくて、恥ずかしい気持ちになり、もっと地元のこと知ろうと強く思いました。外にいることで、改めて内なるものを意識するみたいな。そこからは猛烈な読書の日々です。帰国してから大学入学までの3年間、7,000時間以上も読書に費やしました。読めば読むほどに知識がついて、どんどん世界が広がっていく感覚にハマりましたね。

-読書によって新しい自分との出会いがありますよね。その経験と、今の活動とのつながりはどのようなものでしょう。

読書というのは、内面的な自分に語り掛けたり、自己を投影したり、パーソナルな活動だと思いますが、個人的なものにとどまらず、コミュニケーションの手段として本の面白さを人と共有する、外側へ向けて発信する楽しみ方もあります。一般的には読書会が挙げられますね。
私は大学2年次に、競技形式で本を紹介する、ビブリオバトルというものに出会いました。これは、発表者が本の感想や書評を語り、その後、どの本が最も読みたくなったかを投票するという、言わば書評合戦。ビブリオバトルを知り、本の魅力を第3者に向けて語り掛けることができる、それってすばらしいことだと思いました。そして、ただ紹介するだけでなく、それをきっかけに人と人とがつながる、交流が生まれることで、他者とのコミュニケーションのツールにもなるのです。
絵本がまちを救う!
-本を通じた人々の交流、具体的にはどんな活動をされていますか?

一つはビブリオバトルの周知・普及です。学生時代に、市立図書館の館長さんとのつながりがきっかけで、市民を対象にしたビブリオバトルを開催しました。その他にも、小中学生を対象にしたビブリオバトルを、夏期講習として開催。この普及の波をもっと大きくしたいということで、一般社団法人ビブリオポルトスを立ち上げました。起業後も、岡本太郎美術館の開館15周年イベントにて、「TARO本で語ろう!ビブリオバトルin岡本太郎美術館」を開催するなど、「人を通して本を知る、本を通して人を知る」をキャッチフレーズに、このビブリオバトルを全国で普及させる活動を行っています。
もう一つは若者の読書離れの解消です。川崎市の「読書のまち・かわさき」ってキャッチコピー、すごく好きなんですが、実は川崎って、学生の不読率(1か月に1冊も本を読まない人の割合)が全国平均の2倍なんです。これは由々しき事態!私も小さい頃からものすごく本を読んでいたわけではないですが、両親が読書好きなこともあり、実家の本棚には本がたくさんありました。でも今の子どもたちは両親が本を読まない世代で、実家に本棚がない。そうした中で、ますます読書離れが進んで行ってしまうのです。これを解消すべく、本人へのアンケートをもとにオススメの本を選んであげる選書図書運動というのがありまして、本を通じたセレンディピティ、偶然の素敵な出会い・発見をする機会を提供しています。その他、今年初の試みで、家庭で子どもが読まなくなった絵本を集め、保育園に寄付をする「絵本のまち、かわさき」運動を実施しています。

-自転車で絵本を運んでいる写真を見たことがあります(笑)

きっかけは、保育施設に絵本が足りていないという記事を見たことです。50人の園児に対し、園にある絵本は50冊。しかも、小さな子どもが扱えば破けることもあります。実際に稼働しているのは20、30冊程度なんてことも。
小さいころから本に触れてほしいですし、子どもが絵本を好きになったら、欲しいものを聞かれたときに絵本と言うかもしれません。絵本が自宅の本棚に並ぶ、大きくなって読まなくなったら保育園に寄付、その保育園の子どもたちもまた絵本を読んで好きになる、といったエコシステムを作りたいと思いました。そのために自分で何ができるかを考えたら、自転車があるじゃないか!と(笑)。あれがない、これがないというのを、何でも行政のせいにせず、自分でできることからやっていこうと。超アナログ、泥臭いですけど、バイタリティ溢れる私にしかできないことだと思っています。体力には自信がありますので。「下小田中おやじの会」からソフトボール大会に呼んでいただいたときには、11打数10安打4ホームランという伝説的な記録を残しました(笑)

-それはすごいですね(笑)。活動では、自ら動くことで寄付者の方との接点が生まれ、想いをダイレクトに感じることができますね。

もちろんです。成果もすぐ形に現れます。集めた絵本は自宅の部屋を丸々1つ使って保管、その部屋が本だらけになっています(笑)。これまで9つの園に、合計で300冊くらい届けられました。どの園でも、子どもたちに非常に喜ばれています。当初の目標は500冊だったのですが、勢いづいて5,000冊(!)に上方修正しました。ゆくゆくは市内にある保育園170か所すべてに届けたいですね。
それから、寄付してくれた人には、その絵本がどこの保育園に届いたか必ずお伝えしています。自分の好きだった絵本が、今度はあそこの子たちに読んでもらっているんだって思うことで、私はもちろんですけど、寄付してくれた人にも、地域との接点とか、手応えのようなものを感じてもらいたいですね。
「読書のまち・かわさき」の実現に向けて
-今後の展望はありますか?

具体的なこととして、一つは、選書図書で毎年1冊、小中学生に本をプレゼントしていきたいです。毎年1冊ずつ本を貰い、小中9年間、卒業するときには9冊の本がその子の本棚にあるわけです。もちろん、それぞれの本を学級文庫で共有してもいいですね。そんな環境が出来上がったら、ただ本が増えただけでなく、国語がすごくできるとか、犯罪発生率が低いとか、何かしらのデータが出てくるかもしれません。
もう一つ、「絵本のまち、かわさき」運動を毎年行うことです。今年は私が一人で集めて配るということをやっていますが、リアル自転車操業ですよね(笑)。先ほどエコシステムを作りたいと言いましたが、みんながそれぞれ、自分の読まなくなった本を寄付しようと自主的に動き、例えば区役所の窓口を通じて、地域の保育園に届けるような仕組みが作れればと思っています。

-読書文化を根付かせたい、まさに「読書のまち」を作るということですね。

私はビブリオバトルなどで川崎のあちこちを回ったことで、まちの様々な魅力を知り、もともと好きだった川崎がもっと好きになりました。本を読むことでものを知り、それだけでなく交流のきっかけにしてもらう。結果として、地元や川崎を好きになる、まちが出来上がると思います。自分のできることを実践し、ムーブメントを起こしていく、これが私の考える「読書のまち」です。 絵本の寄付について、絶賛募集中です。目標は5,000冊!中原区内であれば私が自転車で伺います。あなたの家に眠る絵本をぜひ、川崎のまちづくりに役立ててみませんか?
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Emailアドレス:komatsu16yuya@hotmail.co.jp
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